建設現場で若手に仕事を教える時
どんな作業を任せるかで
その人の成長は大きく変わります
特に 「できない」「やった事ない」
と感じている事に対しては
その結果がそのまま自信に直結します
今回は ある外国人研修生に
あえて難しい作業を任せた時の話をします
彼の名前はチュンといいます
愛嬌があって 少し不器用だけど
とても頑張り屋な青年です
チュンくんは
彼以外の研修生2人に比べて
壁のボード貼りでは明らかに遅れていて
チュンくん自身も
自分が遅れている事に
深く悩んでいました
私は彼に成功体験を積ませたいと思い
あえてまだ誰にもやらせた事のない
天井ボード貼りに挑戦してもらう事にしました
※この経緯は中編に書いてあります
壁のボード貼りは
やり方さえ覚えてしまえば
割とスムーズに進める事ができます
ボードの重さもある意味では味方になります
重力がボードを支えるのを
手伝ってくれるからです
ところが
天井のボード貼りは全く別物です
ボードの重さは全て片腕に乗り
もう片方の手で工具を使い
バランスをとりながら
貼る方向に力を加えてビスを止めていく
しかもその間
ボードを落とさないように
片手で支え続けなければなりません
これが最初はとにかく難しい
まずは私が最初の1枚を貼って見せました
天井用のボードを1枚かつぎ
作業台に登り 頭上まで持ち上げる
壁に当たる方向に力を加えながら
最初の2本のビスを打ち込みます
力は抜かずそのまま身体の向きを変えて
反対側にも2本固定します
ここまで来ると手を離しても大丈夫です
残りのビスを固定して
1枚目の天井ボードが完了です
私はチュンくんの方を見ました
私「できる? やってみる?」
チュン「むずかしい でも やります」
不安そうでした
ですがさっきまで俯いていたチュンくんは
しっかりと顔を上げて返事をくれました
今度は私が補助に入り
チュンくんにビス打ちをさせてみました
重さはほとんど私が受けた状態
チュンくんは片手を天井に添え
もう片方の手でビス打ちます
チュン「できました」
小さな声でした
でも さっきよりほんの少し
表情が柔らかくなったように感じました
私「まだだよ 今度はこっち」
チュンくんが身体の向きを変え
こちら側に手を添えた時
私は そっと手を離しました
片方は固定されています
それでも手で支える重みは残っています
1人で支えている緊張が
チュンくんから伝わってきました
チュンくんが工具を構えて
ビスを打とうとした時
チュン「あぁ…」
僅かにバランスを崩し
ビスを打ち外してしまいました
私「まだ大丈夫! そのまま もう一回!」
今度は成功
そのまま全てのビス固定をして
2枚目の天井が完了しました
チュン「できました むずかしい」
次は チュンくん1人で貼ってもらいます
チュンくんがボードを担いで
作業台の上に登り
頭上に上げる
私はすぐ横に立ちました
手は出さない
声だけをかける
何かあればすぐ支えられる距離で見守りました
私「いいよチュンくん 打ってみて」
かなり力が入っているのが
ボードの揺れから伝わりました
チュン「あああ!」
ビスを打ち外しました
思わず大きな声が出ます
私「大丈夫だよ! 落ち着いて もう一回!」
1つ 2つ ビスを打ち
身体の向きを変える
チュンくんはもう汗でびっしょりです
私「あと2本! こっちから打って!」
チュンくんの大きな呼吸が
1度だけ聞こえました
1つ
2つ
ビスを打つ音が続きます
そして最後の一本を打ち込みました
チュン「できました! できました!」
私「ほら見ろ! 他の2人にできない事が
チュンくんにはできたぞ!
どんな気分だ!」
チュン「できました! たのしいです!」
いつの間にか握りしめていた拳が緩むと
思わず私もチュンくんにつられて
力が入っていた事に気づきました
本当に泣くんじゃないかと思うくらい
2人で興奮してしまいました
この後チュンくんは
30枚近くの天井ボードを
1人で貼りきりました
何度かヒヤッとする場面はありましたが
一度ボードを落とす事なく
この日予定していた作業をやりきりました
この日以来
チュンくんの顔つきはすっかり変わり
仕事への向き合い方も
大きく変わっていきます
気がつけば
他の2人にも見劣りしないスピードで
作業をこなすようになっていました
あれから9年
チュンくんにも後輩が沢山できました
今ではベトナム人たちのリーダーとして
毎日現場に立っています
あんなに不器用で可愛い頃もあったなぁ と
思い出を並べながら
今私はこのブログを書いています
技術が先か 人間関係が先か
その答えは未だにわかりません
だけど
そのヒントは ここに
私のすぐ近くにある気がするんです
チュンくんは今
私にとって
立派な頼れる”相棒”です
日本語は未だに苦手だけどねチュンくん
ちなみに
天井ボードを貼った翌日のチュンくんは
チュン「にくたいが いたいです」
どうやら全身筋肉痛になってしまったようです



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