監督「今日この天井にカーテンレールつけます」
私「えっ…そんなの図面にないじゃないですか
この天井追加荷重は想定してないですよ?」
朝からこんな会話でスタートするのは
とても嫌な気分ですね
聞けばお施主様からの追加要望で
簡易パーテーションとしてカーテンレールを
取り付けたいとの事でした
図面にない急な追加変更
建設現場でよくある話ではあります
しかしながらこの天井
カーテンレールを取り付ける事など
一切想定しておらず
ただただボードを貼るためだけの下地しか
組んでおりません
野縁が通っているラインで取り付けるから
問題ないと監督さんは仰いますが
それ 本当に大丈夫でしょうか?
確かに
我々が組んだLGSが通っているライン上に
ビスで固定しようと思ば
取付け自体は可能です
そこにカーテンが吊るされたとしても
数年くらいは普通に使えるかもしれません
では
開け閉めの時に強く荷重がかかり
それが毎日続いたら?
誰かがつまづいた時
カーテンにつかまり体重がかかったら?
そんな想定外の荷重に対応できない天井は
どんどん痛んでいきます
最悪レールごと外れて落下してしまうでしょう
| 項目 | シングル野縁 (R-19) | ダブル野縁 (W-19) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 断面寸法 | 25×19mm | 50×19mm | 高さ19mm |
| 板厚 | 0.5mm | 0.5mm | 一般的な普及材 |
| JIS試験荷重 | 約300N(約30kg) | 約300N(約30kg) | 瞬間的な耐力 |
| 実務上の許容荷重 | 約5kg | 約10kg | 長期使用前提 |
| 想定用途 | ボード支持 | ボード支持 | 吊り下げ用途ではない |
この数字を見れば分かる通り
野縁は「物を吊るすための構造」ではなく
あくまでもボードを支えるための部材です
「30kg耐える」という数字だけを見ると
大丈夫じゃないかと思うかもしれませんが
これは試験状況下で
瞬間的にこの重量に耐えたというもの
実際に日常使用が許容されるのは
許容荷重 こちらを見るべきです
では
現状の天井にカーテンレールを取り付け
万が一落下したケースの考察をしてみましょう
多くの現場で問題になるのが
「誰の責任なのか」という点ですが
このケースでは
責任は一箇所に限定されるものではなく
状況によって分散します
大きく分けると以下の3つです
①取付け業者の責任(施工不備)
カーテンレールを取り付けた業者には当然
「適切な施工を行ったか」が問われます
・下地を正確に捉えていない
・ビスが十分に効いていない
・荷重に対して不適切な固定方法
・危険性を認識しながら施工した
これらの場合は施工不備となり
責任が問われる可能性があります
②内装業者の責任(仕様不備)
天井を施工した側の責任が問われるのは
本来あるべき使用を満たしていなかった場合です
・図面通りの補強下地を入れていない
・LGSのピッチが規定外
・荷重に対する強度条件を満たしていない
このようなケースでは
構造的な不備として我々の責任が発生します
ただし
そもそも「何も吊らない前提」で
施工された天井に対して
後から追加された物の荷重までは
既存天井の強度で保証するものではありません
③元請け・監督の責任(判断・管理)
今回のような後出しの追加変更の場合
最も重要になるのがこの部分です
・十分な補強ではない状態で施工を指示した
・荷重条件を考慮していない
・用途と構造の不一致を見逃した
こういった場合ですと
管理判断の責任が問われる可能性が高いです
ここで重要なのは
誰が悪いか という話ではありません
想定外の荷重が
誰の責任範囲にも定義されないまま
施工されようとしている事
これが現場でトラブルが起きる本当の原因です
そしてもう一つ
「取り付けても大丈夫ですよ」という言葉は
万が一の責任も含めて引き受ける
という意味になる事があります
この線引きを曖昧にしたまま
作業を進める事は非常に危険です
では
どうすればこの天井に
安全にカーテンレールを取り付けられるのか
結論から言うと
追加工事として
LGSをガッチリ組み直す必要があります
①ボードを一度剥がす
カーテンレールを取付けるラインのボードは
一旦撤去します
既存の天井下地では
追加荷重や想定外荷重に対応できないためです
②野縁受け(チャンネル)
もしくは角パイプを追加する
カーテンレール取り付け位置に合わせて
レーザーを出します
そのラインに合わせて野縁受けや各パイプを
1本追加します
既存天井の野縁受けと直行する向きの場合
その上に乗せて固定するイメージです

③吊り元を強化する
②で追加した野縁受け もしくは角パイプは
既存の野縁受けとは別で固定すら必要があります
運良く直上にアンカーインサートがあれば
それを使うと良いですが
なかった場合
SEハンガーやGブレスでしっかりと固定
既存の野縁受けの上に直行方向で乗せる場合は
ワイヤークリップや固定金具で固定した上で
更に補強をとります
④追加した野縁受け 角パイプに
カーテンレールを取り付ける
ハンガー式 ボルトナット式の釣り金物
こういった物を使用して
追加した野縁受け 各パイプに
カーテンレールを取り付けてもらう
ここまでやって初めて
追加荷重に耐え得る構造の天井下地が完成します
時々 カーテンレール下地として
野縁に鉄板を貼ってほしいと
指示を受ける事がありますが
それでは許容荷重は変わりません
むしろ鉄板分の重量が増える事で
野縁にかかる荷重が増加してしまいます
取り付けに問題がない形になっていても
構造として成立していなければ意味がありません
そして
この状態で施工を進めた場合
万が一落下事故が起きれば
施工不備として我々の責任を
問われる可能性が高くなります
監督とレールの取り付け業者さんを交え
これらの方向性を共有しながら
1番安全な 責任の少ない提案をしましょう
目の前の収まりだけで判断してしまうと
必ず歪みが形となって現れます
その場を収めるだけの判断よりも
後から誰も困らない判断を私はしていきたい
取り付けができるか ではなくて
安全に使い続けられるか
この視点を持つだけで
現場のトラブルは確実に減らせます
今日の完璧は
必ず数年後の安全にまで繋がっていきます
そんな仕事が当たり前にできたら
素敵ですよね
本日も ご安全に



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